「あ、はい」

 あわてて仕事用の笑顔を返し、カウンターの前にある椅子に腰をおろす。

 対面に座った役人さんは、丸眼鏡をかけた、いかにも公務員という感じの人だ。とりあえず、不法入国扱いをされなかったことにほっとする。

「あの、質問してもいいですか。さっきの人がイセカイジン、って言ってたと思うんですけど」 

「ああ、そうですね。あなた――ええと、名前は?」

「桜井恵都です」

 役人さんは、うんうんと頷きながら書類になにかを書き込んでいる。

「ケイトさんね。簡単に言うと、ケイトさんはここではない別の世界から来たようですね」

「――は?」

 お医者さんが『風邪のようですね』と言うときのような、ごくふつうのトーンでとんでもないことを言われた。

「ケイトさんのいた世界は何という名前でしたか?」

「ええと、地球?」

「そのチキュウ、とここは別のものです。似ているようで違うもの、と言えばいいでしょうか」

 どういうことだろう。まさか、知らない間に宇宙旅行をしていたとでも言うのだろうか。