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 年が明けてしばらくはお店も休みになるので、新年最初の朝は存分に寝坊をした。昨日は遅くまで出歩いたから、夢も見ないほどぐっすり眠れたみたいだ。

 ふわあ、とあくびをしながら朝食の用意をする。お雑煮とお節料理が食べたい気分だけど、簡単なもので我慢しよう。

 キッチンからテーブルに朝食を運ぶとき、扉に何か挟まっていることに気付いた。

「なんだろう……カード?」

 引き抜いてみると、お店のカードだった。『扉を開けろ』と書いてある。

 不審に思いながらも扉を開けると、廊下の壁側にリボンのかかった箱が置いてあるのが目についた。

「これって……」

 開けてみると、昨日私が買うことをあきらめた毛糸のショールが入っていた。

「嘘、どうして」

 ショールを持ち上げる手が震えてしまう。

 箱の中にもカードが入っており、開くと三通りの筆跡が並んでいた。

【新年の贈り物だよ。びっくりした? セピア】

【アッシュが選んだにしては女心をわかっているわね。クラレット】

【やはり君に似合うと思ったからこれにした。今年もよろしく頼む。アッシュ】

 この国では、新年の贈り物をするのが習慣だ。

 ――そう、恋人や“家族”に。

 カードに書かれた字が、水滴を落としたようにじわりと滲む。

「もう、こんなの、卑怯だよ、みんな……」

 あふれてきた涙をぬぐいながら、ショールを肩にかけてみる。まさか、あのあとひとりで戻って買ってくれたのだろうか。あのアッシュが、人混みの中を。

 お花の並んだショールは、あったかくて、やわらかくて……。彼の手のぬくもりを思い出してまた、泣けてきた。

 休みが終わったら、私からも三人に贈り物を渡そう。みんなはこの世界での家族だよって感謝をこめて。

 照れないで渡せるかな。どんな顔で受け取ってくれるだろう。

 あれこれ考えていると、胸がぽかぽかとあたたかくなるのを感じた。