「はあ……。見たところ外国人のようですが」

「どうやら異世界人のようだから連れてきた」

「えっ……」

「送り届ける責任は果たした。あとはお願いする」

 呆然としている役人さんに私を託して、さっさと扉まで去ってしまったアッシュに声をかける。

「アッシュさん、待って!」

「……何だ」

 アッシュは扉に手をかけつつも、一応立ち止まってくれた。

「あの、ありがとうございました」

 ぺこりと頭を下げると、アッシュは目を丸くしていた。なぜ驚く?と思ったあと、ぎろりと睨まれた。

「あんなところで死なれても目覚めが悪いから連れてきただけだ。勘違いするな」

「なっ……」

 ものすごく力のこもったしかめ面を向けられて、硬直する。

「じゃあ、俺はこれで」

 絶句したまま扉のむこうに消えるアッシュを見送った。

 なんなの、お礼を言っただけなのに。本当は親切な人かもと思った自分が馬鹿みたい。かっこいいと思ってしまった人にあんなに冷たくされるなんて、自分で思っていたよりもショックだ。

「あの~、とりあえずこちらに座っていただけますか?」

 ぷりぷりしていると、役人さんがおそるおそるといった様子で声をかけてくる。