ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

 そしていっそう大きな歓声が沸いたとき、すらりとした男性が出てきた。大きなマントで身を覆うようにしているのも不思議だったが、もっと異様だったのは仮面舞踏会みたいなマスクで顔を隠していることだった。

「あれが、第二王子だ」

 以前クラレットから聞いたことのある、庶民に人気のある王子だ。確か側室がたくさんいるんだっけ。

「どうして仮面をしているんですか?」

 背伸びをし、手でメガホンを作るようにして、アッシュの耳元でたずねる。

「あの王子は昔からそうなんだ。国民の前では顔を見せない。市井に下りてお忍びで妻を探せなくなるからとか、顔に傷痕があるからとか、美形すぎて卒倒する国民がでてくるからとか、いろいろ言われているが本当のところはわからない」

 ミステリアスな王子なのに人気なんだな、と思っているうちにスピーチは終わったようだ。次は言われなくてもわかる、明らかに王様らしい人が出てきた。

 長く伸ばしたひげ、他の王子たちよりも一段と大きな王冠、縁にふわふわの毛皮がついた赤いマントは、遠くから見ても目印みたいによくわかる。

 王様がひとことふたこと話したあとに、今まで出てきた王族たちも後ろに整列し始めた。みな一様に、大きな筒のようなものを持っている。王様が渡された筒はさらに大きく、大砲のように見えた。

「あれはなんですか?」

 まさか本当に大砲じゃないだろうと思いつつも、おそるおそるアッシュに訊いてみた。

「大きな音が鳴って、紙吹雪が出てくるおもちゃだ」

 なるほど、クラッカーのようなものかとほっとする。いやむしろ、あそこまで大きいと、くす玉のかわりなのかもしれない。