ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

「ケイト」

 しばらく隣の出店を見ていると、アッシュが呼びに来た。

「そろそろバルコニー前広場に移動しよう。セレモニーが始まる」

「あ……はい」

 まわりの人たちも、ちらほら同じ方向に移動を始めているみたいだ。

「バルコニーに、王族の人たちが出てくるんですか?」

「ああ。年の明ける少し前から王族たちのスピーチが始まって、年明けの瞬間は王が出てくる。もっとも、顔もわからないくらい遠くからしか見えないが」

「それでも、同じ瞬間をたくさんの人と共有できるのは貴重ですよね。楽しみだな」

 バルコニー前広場には、すでにたくさんの人たちが場所を取っていた。兵士らしき人たちもあちこちで警備している。

 楕円形に大きく張り出したバルコニーは、たくさんの人の頭のずっと先にあった。手すりの縁には赤や緑の葉っぱが飾り付けられ、壁には紋章の描かれた布がいくつも垂れ下がっている。

「近くで見ようとすると、昼前から場所を取らないといけないからな」

 なんだかテーマパークのショーみたいだなと思った。確かにああいうものには、お城と王子さまとお姫さまはつきものだが。

 たくさんの人が集まってきて、ざわめきでアッシュの声が聞き取れなくなった頃、王族がバルコニーに出てきた。わあっという歓声があがる。

 人形くらいの小ささにしか見えないが、大きな王冠と、豪奢なマントを身に付けているのがわかる。着ている白いスーツは、ウォルが着ていたものに雰囲気が似ていた。

「第一王子だ」

 アッシュが耳元で説明をしてくれる。そのあとも、第一王子の妃や小さな子どもたち、王女や王妃さまが入れ替わりでスピーチしていった。