ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

 たくさんあったごちそうも食べ終わり、すっかりお腹もふくれたあとは、食べもの以外の出店を見て回った。

 アクセサリーや小物、古本なんかもあった。仕事では高級な装飾品ばかり目にしているので、こんなふうに素朴でかわいいものを物色するのは新鮮で楽しい。私でも手の出る値段だし、記念に買って帰ってもいいかもしれない。

 かぎ編みで作ったお花がたくさんついた毛糸のショールを見ていると、アッシュが横から覗き込んできた。

「それを買うのか? 凝っているわりには破格だな。いい品だ」

 しげしげと編み目を眺めているのは職業病だろうか。

「迷ったんですけど……。私にはかわいすぎるからやめておこうかなって」

 生成り色をベースに、色とりどりの淡い色味のお花が散っていてメルヘンなテイストだった。

「たしかにデザインはかわいらしいが、色味は落ち着いているからケイトに似合うと思うが」

「いやいや、ダメですよ。こういうのはエリザベスさまみたいな女の子じゃないと。あ、私、あっちの店も見てきますね」

 まだ何か言いたそうなアッシュを残し、さっと移動してしまった。態度が不自然だと思われていないだろうか。

 自分にはかわいすぎるから買わない、というのも嘘ではない。でも本当の理由は、あまり思い出に残るようなものを持って帰れないと思ってしまったから。

 もとの世界に帰っても、あのショールを見たらきっと、今日アッシュと過ごしたことを何度も何度も思い出してしまう。もう戻れない場所、会えない人を想うのは悲しい。こちらの一方通行な感傷ならば、なおさら。