「だ、大丈夫です。すみませんがっついてしまって……」
色気よりも食欲を取ってしまったが、ここは普通だったらお上品に食べなければいけない場面だったのでは。
「いや、いい。食べっぷりがいいのは見ていて気持ちいい。作った人も本望だろう」
「そ、そうですか」
お腹が落ち着いてきたのもあるけれど、なんとなくペースダウンしてしまう。ゆっくり食べていると、人通りを見回す余裕も出てきた。
「あ、あのドレス、うちの店のですね。遠くから見ても目を惹きますね」
外套から出ているスカート部分だけで、アッシュがデザインしたものだとすぐわかる。着ている令嬢の顔は見えないのに、ドレスだけが夜闇の中に浮き出ているみたいだった。
「ああ。こうして見ると、ちらほら目につくな」
「すごいですね……。私ももとの世界にいた頃は、自分のお店の服を着ている人や、ショップ袋を持っている人を見かけるとなんだか嬉しくって。でもなんだか今は、そのとき以上にすごく嬉しいです」
お客さまと一緒に布を選んで、たくさんの話をして。そうしてできあがった一着だから、売り子の私にもとても愛着がある。
「そうか」
「こんな気持ちでひとりひとりのお客さまと向き合えば良かったんですよね。自分が選んでくれた服を着てもらえたら嬉しい、その気持ちがいちばん大切だったのに」
売り上げとか、お客さまに気に入られたいとか、そんな難しいことを考えるのは自分に向いていなかった。ただ素直な気持ちで服と向きあったら、お客さまにも自分の気持ちが伝わった気がした。
「もとの世界に戻っても、同じようにできるだろう。今の君なら」
「そうですかね……」
胸の奥が、チクンと痛む。
アッシュは私がもとの世界に戻ることを、なんとも思っていないんだな。最初から一年の約束なんだから、そんなの当たり前なのに。
色気よりも食欲を取ってしまったが、ここは普通だったらお上品に食べなければいけない場面だったのでは。
「いや、いい。食べっぷりがいいのは見ていて気持ちいい。作った人も本望だろう」
「そ、そうですか」
お腹が落ち着いてきたのもあるけれど、なんとなくペースダウンしてしまう。ゆっくり食べていると、人通りを見回す余裕も出てきた。
「あ、あのドレス、うちの店のですね。遠くから見ても目を惹きますね」
外套から出ているスカート部分だけで、アッシュがデザインしたものだとすぐわかる。着ている令嬢の顔は見えないのに、ドレスだけが夜闇の中に浮き出ているみたいだった。
「ああ。こうして見ると、ちらほら目につくな」
「すごいですね……。私ももとの世界にいた頃は、自分のお店の服を着ている人や、ショップ袋を持っている人を見かけるとなんだか嬉しくって。でもなんだか今は、そのとき以上にすごく嬉しいです」
お客さまと一緒に布を選んで、たくさんの話をして。そうしてできあがった一着だから、売り子の私にもとても愛着がある。
「そうか」
「こんな気持ちでひとりひとりのお客さまと向き合えば良かったんですよね。自分が選んでくれた服を着てもらえたら嬉しい、その気持ちがいちばん大切だったのに」
売り上げとか、お客さまに気に入られたいとか、そんな難しいことを考えるのは自分に向いていなかった。ただ素直な気持ちで服と向きあったら、お客さまにも自分の気持ちが伝わった気がした。
「もとの世界に戻っても、同じようにできるだろう。今の君なら」
「そうですかね……」
胸の奥が、チクンと痛む。
アッシュは私がもとの世界に戻ることを、なんとも思っていないんだな。最初から一年の約束なんだから、そんなの当たり前なのに。



