ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

「不安にはならないな。自分に似合うものも、自分が好きなデザインも熟知しているし、あとはそのふたつをうまくすり合わせるだけだ」

「自分のスタイルを確立されているんですね」

「そんなにいいものではない。こだわりが強いだけだ」

 そんな会話をしながら出店を見てまわっていると、簡易テントの中で売り子をしているセピアに会った。

「アッシュ、ケイト! 良かったら何か買ってってよ」

 おかみさんと旦那さんが、汗をぬぐいながら即席かまどで料理している。じゅうじゅうという肉の焼ける音と食欲をそそる匂いのせいで、お腹がぐうぅと鳴ってしまいそうになった。

「せっかくだから、何か食べるか。何がいい?」

「ええと、牛串と、あったかい飲み物を」

「わかった」

 アッシュが注文をセピアに伝えている。どうやら本当におごってくれるらしい。

「ああ、お嬢さん! この前はごめんねえ。おわびにサービスしておくから」

 おかみさんがこちらに気付いて声をかけてくれた。軽くお辞儀をしたあと近くのベンチで待っていると、アッシュが両手に食べものを抱えながら戻ってきた。

「ありがとうございます。ずいぶん大量ですね」

「俺が頼んだわけじゃないのだが、いろいろ持たされてしまった。これは揚げたドーナツ、こっちはカスタードパイだそうだ。蓋付きの器に入っているのはポトフとシチューらしい」

「すごい。ディナーがフルコースで済んでしまいそうですね」

「ああ。ここで座って食べるか」

 この間は食べそこねたごちそう。セピアくんがオススメするだけあって、本当になにを食べてもおいしかった。

「これも食べるか?」

 私が無言でもくもくと平らげているのを見て、アッシュが自分の分の牛串を差し出してくれた。