ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

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「毎年すごい人混みだな」

 お城の近くにある噴水広場は、たくさんの出店と人でごった返していた。

 来る途中の通りにも出店が並んでいたし、街をあげての大きなイベントなんだなと実感する。現代日本と違ってイルミネーションなどはないが、ランプやたき火の光でほの明るい。

「寒いけど、うきうきしちゃいます」

 外套と手袋、ケープでしっかり防寒していても、むきだしになった頬がつめたい。

「ケイトは人混みが得意なのか?」

「私もあまり好きではないんですけど、こういうお祭りだと気にならないんです。アッシュさんも、おいしいものを食べたら気にならなくなりますよ、きっと」

「そうかもしれないな。確かに子どものころは、人混みよりも出店に夢中だった」

 私は手袋をはめた手をこすり合わせているというのに、アッシュは涼しい顔をしている。寒いのに涼しい顔、というのも変だけど。

 今日着ている黒いロングコートはいかにも仕立てが良くてあったかそうだ。シンプルなデザインがアッシュらしい。

「あの、そのコートも自分で作ったんですか?」

 歩きながらたずねると、アッシュはうなずいた。

「ああ。手袋や帽子や……たいていのものは自分で仕立てている」

「すごいですね。あの、自分の服を自分で作るのって、どんな気持ちなんでしょう」

「どんなとは?」

「私だったら、こんな可愛いドレスが本当に自分に似合うんだろうか、って不安になっちゃいそうで。アッシュさんはかっこいいから、そんなことないとは思うんですけど」

 アッシュは「なるほど」と言いつつも、意外な質問をされたように顎に手を当てて考え込む。