ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

 さすがに大晦日にお客さまは来ないようで、午前中の来店はウォルひとりだった。そのあとも予定は入っていないので、お昼すぎにお店を閉めてしまうことにする。

「今日は夜からちょっとしたお祭りがあるのよ。お城の前の広場にみんなで集まって、新年になった瞬間をお祝いするの」

 いつもより念入りに掃除をしたあとソファでお茶を飲んでいると、クラレットが楽しげな話題を口にした。

「わあ、楽しそう」

 もとの世界でいうカウントダウンイベントみたいなものだろうか。紅白歌合戦も、ゆく年くる年もない静かな年明けだと思っていたから、お祭りがあることにわくわくした。

「この街の人はほぼみんな参加する恒例行事よ。あなたも行ってみたらいいんじゃない。出店もたくさん出るし」

「うん。じゃあクラレット、一緒に――」

「私はダメよ。新しく恋人ができたばかりだから、彼と行く約束をしているの」

 言い終わらないうちに、そっけなく断られた。

「い、いつの間に!」

 しかも恋人ができたなんて話、全然聞いていない。

「教えてくれてもいいのに」

「まだ付き合い始めなのよ。もう少し落ち着いたら報告するつもりだったわよ、もちろん。ケイトには心配かけたし」

「そうなの……」

 付き合いたての、大事な時期のカップルを邪魔する趣味はない。

「だったらあの、よかったら三人で行きませんか」

 一緒にソファでくつろいでいた、アッシュとセピアに声をかける。

 他に誘う人もいないし、まわりがイベントに参加している中ひとりで部屋にこもっているのはだいぶ寂しい。

「あ、僕も無理。レストランのおかみさんとご主人に誘われてるんだ。出店を出すらしくって人手が足りないらしいから、手伝いに行くことになってて」

 セピアにも、さらっとした口調で断られた。

「そうなんだ。それなら私も――」

「僕一人でじゅうぶん手は足りるってさ。それより、アッシュとふたりで楽しんできなよ」

「えっ、でも」

 アッシュは私とふたりでなんて嫌なんじゃ、と思って遠慮がちに顔を見上げる。相変わらず無表情で感情が読めないけれど、返ってきたのは意外な返事だった。