ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

 細かな彫刻と、埋め込まれた色とりどりの石がただでさえ高価そうなのに、それ以上サプライズがあるというのか。

 くらりとしながら宝石箱の蓋を開けると、ブローチが入っていた。緑色の石のものと、赤い石のものが、お揃いでひとつずつ。

「ちいさなカードも入ってる。ええと、ケイトとクラレットに、って書いてある」

 文字の勉強をしたので、これくらいの簡単な文なら苦もなく読めるようになった。

 クラレットは悔しそうに唇をかみながら、赤い石のブローチを手に取った。

「私の機嫌までとって、本当に抜け目のない人ね。しかも私の好みまで知っているのかしら」

 金色の台座に大きな石がついたブローチは、意外とシンプルだった。でも、楕円形の石が細かくカッティングしてあるから、輝きがすごい。

「ねえ、これってまさか本物の宝石じゃないよね……?」

 片手にすっぽり収まるサイズのブローチだし、そんなことはありえないと思いつつも、一応クラレットに訊いてみた。

 さっそくドレスの胸元にブローチをつけていたクラレットの動きが、ぴたりと止まる。

「……ち、違うと思うわよ」

「そ、そうだよね」

 本物の宝石だったら、一体何カラットくらいになるのか。考えると恐怖を感じてきそうなので、やめることにした。

「まさかね。そんなことないわよね」とつぶやいているクラレットの言葉を信じていいのか少し不安だけど。