ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

「あの、ウォルさま……? 私なにか失礼なことでも」

「いや、違う違う。ケイトは本当に面白い子だなと思ってね。王子さまみたい、だなんて褒められたのは初めてだよ」

「そうなんですか……?」

 もとの世界では割と定番の褒め言葉だと思うのだが、こちらではあまり使わないのだろうか。

「今日はあまり長居できなくてね。慌ただしくてすまないが、約束のものをお願いできるかな」

「かしこまりました」

 ソファテーブルに用意してあった、ビロード張りのアクセサリーボックスを持ってくる。

「こちらになります。確認していただけますか」

 ウォルの手のひらに収まってしまうサイズのボックスを、緊張しながら手渡す。

 神妙な顔でウォルが箱を開けると、ぱかっという音がした。

「……これは……」

 目をみはったウォルの次の言葉を、ドキドキしながら待つ。私の心配を吹き飛ばすように、ウォルが満面の笑みを見せた。

「想像以上だよ。華やかだし、繊細さもある。ハート型も均整がとれていて美しい。……そうとう練習してくれたのかい?」

「喜んでいただけて良かったです」

 クリームを塗っても隠しきれなくなった荒れた手は、そっと隠した。

「入っているのは、石?」

「はい。キラキラ光る赤とピンクのビーズを入れました。ちいさな薔薇を入れるかどうか迷ったのですが、冬場は薔薇が手に入りにくいのでこちらに」

 型を調整するときにハート型にした、不思議の国のアリスの『ハートの女王』をイメージした赤が基調のイヤリング。

「土台のパーツに小さなパールとダイヤもあしらって、長さを出すためにしずく形のパールを揺れる感じで付けました。『宝石以外で』と言われたお題にそむいてしまいますか……?」

 フェイクパールやスワロフスキーがあれば良かったのだが、この世界では見つからなかったのだ。