ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

 そして忙しい年末が始まった。昼間は昼間でお客さまが多いし、お店が閉まってからは自分の部屋でレジンアクセサリーの練習。正直、寝る時間も惜しいくらいだった。

 友達に教えてもらったときはもう少し上手くできたのに、レジンがきれいな形にならない。まずは型を調整することから始めなければいけなかった。

 本当に新年までに、ウォルに渡せるレベルのものが完成するのだろうか。

 弱気になってしまったときは、鞭の使い方がうまいクラレットに喝を入れてもらった。簡単に飴はくれないのが彼女らしいけれど。

 かじかむ手の冷たさと、ランプの薄暗さの下での作業にも慣れてきたころ、今年最後の日がやってきた。

「やあケイト。取りに来るのが遅くなってすまないね」

 開店直後の時間にウォルがやって来た。クラレットが届け物をしに行ってしまったので、私ひとりで対応しなければならない。

『万が一ウォルさまがいらしたら、くれぐれも気を付けて』と言っていた彼女の言葉を思い出すと、緊張で動作がぎこちなくなってしまいそうだった。

「とんでもないです。私がぎりぎりまで待って欲しいってお願いしたせいですし」

 今日のウォルは服がやたらときらびやかだ。よく見ると裏地に金の糸で刺繍がびっしりとほどこされている白いマント、タキシードというよりは軍服のような形の、たくさんの勲章がつけられた白いスーツ。

「今日のお召し物はすごく華やかですね」

 そう告げると、ウォルは今気付いたかのように自分の身体をひねって見下ろした。

「ああ、これのこと。年明けに向けてちょっと大げさにしないといけなくてね。ケイトはどう思う? この服装」

「すごくお似合いだと思いますよ。王子さまみたい」

 素直な褒め言葉だったのに、ウォルはおかしそうに笑い始めた。