一旦、話の区切りがつくと互いに沈黙してしまう。何か話さなければ……と思っていると、水城さんが『あのさ……』と改まって言った。

『この間の事だけど、俺とのこと……少しは考えてくれたか?』

「え?」

俺との事。と言われ、ドキリとする。

――君の気持ちもちゃんと聞かせてくれないか?

私は水城さんに答えを出さなければならない。交際をお断りして、何もなかったことにするのだ。頭の中で策は組み立ててある。けれど、水城さんの声を聞くたびに、その思いが揺れ動く。

「謝恩会で……お返事するようにします、ね」

期待なんかしないで欲しい。私は水城さんとは付き合えないのだから。

私の声は自然と暗く、歯切れも悪かった。

『わかった。おやすみ』

「おやすみなさい」

せっかく電話をくれたというのに、大した話もせずに電話を切った。本当はもっと笑ってお喋りしたかったけれど、彼を騙しているという意識が邪魔をする。
水城さん、週刊誌のことに触れなかったな……やっぱり何かの間違いなのかな。

知ってるけど、敢えて隠してるとか?

だけど、週刊誌の事を理由にしなければ私の策は意味をなさなくなる。

私は優香とレクチャーの最中だったということをすっかり忘れ、ベッドに入って目を閉じた――。