生い立ちのところに書かれていたことに目が留まり、私は目を見張って何度も見返した。

――両親は彼が高校生のときに他界……その後、三人の兄弟の面倒を見ながら奨学金を得て大学へ進学……。

別に隠していたわけではないと思うけれど、水城さんは苦労人の社長だった。決して小さい頃から御曹司のお金持ちで、なに不自由なく暮らしていたわけじゃなかった。今の彼があるのは、すべて本人が必死に努力したおかげ。そういえば、社長だからといって鼻にかけることも、いけ好かない態度も一切感じられなかった。

きっと、誰に頼るわけでもなくひとりで頑張ってきたんだ。

両親がいない寂しさはなんとなくわかる。自分のことでいっぱいいっぱいのはずなのに、水城さんは兄弟の面倒までみていた。社長と言えば横柄で偉そうというイメージがあったけれど、水城さんは全然違った。

真面目で優しくて面倒見がよくて……それから――。

あーもう、何考えてるんだろ。さっきから水城さんのことばかり……。

――君の気持ちもちゃんと聞かせてくれないか?

ふと、水城さんの言葉が脳裏に蘇る。

あ! 優香に水城さんと本当に恋人同士なのかどうか肝心なこと確認しそびれちゃった……。

「もう……」

私は無意識に浮かんでくる彼の姿をブンブンと首を振ってかき消し、布団にもぐってギュッと目を閉じた――。