偽恋人からはじまる本気恋愛！～甘美な罠に溺れて～

水城さんのことをもっと知りたい。けれど……。

“恋人の振りがいつまで続けられるかわからない”という不安を言おうか言うまいか迷っていると。

「愛美、本当のところ水城さんのことどう思ってる？」

突然、優香が思わぬ質問をぶつけてきた。

「どうって……水城さんはすごくいい人だよ。ただそれだけ」

「本当に？　あのね、私、自分のことしか考えてなくて愛美には悪いと思ってる。これ以上恋人の振りをし続けることはできないって言われたら、私、どうしたらいいか……」

双子は言葉にしなくても考えていることがわかる。というのはこのことだ。

まだ口にしてない私の胸の内を察してか、そう言って優香は顔を曇らせて俯いた。

優香が今の彼氏と交際していられるのも、私が優香の代わりに恋人として水城さんと付き合っているからだ。私の気持ち次第ですべてが変わってしまうということを、優香は重々承知している。

先にそんなこと言うなんて、優香はやっぱりずるい……私だって不安なのに。

水城さんは気が利くし、紳士でかっこよくてなにもかもがパーフェクトだ。だから、優しくされるたびに騙している罪の意識が徐々に大きくなってきている。それこそ最初はゲーム感覚で面白いかもなんて思ったけれど、やっぱりそんなふうに思うことなんてできない。すべてを知られてしまった時のことを考えると怖かった。それに、私が本気で水城さんに特別な感情を抱いてしまうのも……。

「優香、私ね――」

やっぱり自分の気持ちをちゃんと伝えようとしたその時だった。テーブルに置かれた優香のスマホが鳴り、「お父さんからだ」と言って彼女は自分の部屋に戻るでもなくその場で話し始めた。