優香に手渡された布巾でお茶を拭きながら、もう何度目かになるため息をついていると、優香がニヤッとして私を見た。
「心ここに非ずって感じだね、もしかして水城さんのこと考えてるんでしょ?」
「……うん」
「おっ、素直に認めたね」
こんなところで誤魔化したって意味はない。だから私は正直に頭の中が水城さんのことでいっぱいだと白状した。
「優香に言いたいことが山ほどあるんだから、全部聞いてよね」
「わかった、わかった。それで? 水城さんとはどんな感じなの?」
私はお茶を改めて注ぎ直し、ソファに座ると優香が「それで? それで?」と目をキラキラさせながら私の正面で膝を抱えて座った。そして、初めてデートして食事をしたことや、ワインをこぼすという失態や、ついでに優香がホラー好きとか水城さんに余計なことを言ったせいで、苦手なホラーを観るハメになったという文句も言った。
「あちゃー、そうだ、愛美はホラー嫌いだったね、勘違いしてたわ」
「勘違いしてたわ、じゃないよ、もう」
「ごめん、ごめん、ちゃんと話を擦り合わせておくべきだったね」
優香はパンと目の前で両手を合わせて“ごめん”のジェスチャーをする。
「……それに、私パリメラに行ったことないってうっかり本当のこと言っちゃって、なんとかフォローしたけど、怪しまれたかも」
優香はひとごとだと思って、私の話を聞きながら愉快そうに笑っている。
「じゃあさ、今度パリメラの本店に行ってみたら? そうすれば話のネタにもなるでしょ?」
確かに。彼の情報を目で確かめることも必要かもしれない。今度連れて行ってくれるって言ってたけど、口先だけで誤魔化し続けるにも限界があった。それに“水城さんの店”がどんなところなのかも気になる。
「そういうけど、簡単に入れる店じゃないよ」
高級レストランであるパリメラは、普段気軽に行けるような場所じゃない。給料日前で財布がひもじい私に比べ、高給取りの優香にとってはいつでも気兼ねなく行ける店なのかもしれないけど。
「愛美?」
浮かない顔をしている私を優香が怪訝に覗き込む。
「心ここに非ずって感じだね、もしかして水城さんのこと考えてるんでしょ?」
「……うん」
「おっ、素直に認めたね」
こんなところで誤魔化したって意味はない。だから私は正直に頭の中が水城さんのことでいっぱいだと白状した。
「優香に言いたいことが山ほどあるんだから、全部聞いてよね」
「わかった、わかった。それで? 水城さんとはどんな感じなの?」
私はお茶を改めて注ぎ直し、ソファに座ると優香が「それで? それで?」と目をキラキラさせながら私の正面で膝を抱えて座った。そして、初めてデートして食事をしたことや、ワインをこぼすという失態や、ついでに優香がホラー好きとか水城さんに余計なことを言ったせいで、苦手なホラーを観るハメになったという文句も言った。
「あちゃー、そうだ、愛美はホラー嫌いだったね、勘違いしてたわ」
「勘違いしてたわ、じゃないよ、もう」
「ごめん、ごめん、ちゃんと話を擦り合わせておくべきだったね」
優香はパンと目の前で両手を合わせて“ごめん”のジェスチャーをする。
「……それに、私パリメラに行ったことないってうっかり本当のこと言っちゃって、なんとかフォローしたけど、怪しまれたかも」
優香はひとごとだと思って、私の話を聞きながら愉快そうに笑っている。
「じゃあさ、今度パリメラの本店に行ってみたら? そうすれば話のネタにもなるでしょ?」
確かに。彼の情報を目で確かめることも必要かもしれない。今度連れて行ってくれるって言ってたけど、口先だけで誤魔化し続けるにも限界があった。それに“水城さんの店”がどんなところなのかも気になる。
「そういうけど、簡単に入れる店じゃないよ」
高級レストランであるパリメラは、普段気軽に行けるような場所じゃない。給料日前で財布がひもじい私に比べ、高給取りの優香にとってはいつでも気兼ねなく行ける店なのかもしれないけど。
「愛美?」
浮かない顔をしている私を優香が怪訝に覗き込む。



