偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~

――君の気持ちもちゃんと聞かせてくれないか?

今のニュアンスからして、まだ『付き合って欲しい』『はい。喜んで』という恋人成立段階には達していないような……そんな気がしてならなかった。

どういうこと? 恋人同士だからその振りをしてって言ってきたんじゃないの?

「……わかりました」

わけがわからない。

とにかく、私はそう返事をしてその場をやり過ごすことにした。

「よかった」

水城さんはホッとしたように微笑む。

「すみません、なんだかストーカー騒ぎで遅くまで付き合わせてしまって」

「いいんだ。俺が会いたいって言ったんだし。それに、ああいう奴は警察からしっかりお灸を据えてもらわないと、また同じことを繰り返すかもしれないしな」

水城さんがそっと私を引き寄せたかと思うと、チュッと額に甘い水音を立ててキスをした。

い、今、おでこにキス……された!?

口づけられた部分が熱く疼くとササッと前髪で隠し、恥ずかしくて俯いてしまう。ドキドキして耳朶まで真っ赤になる。顔が上気して、眼鏡のレンズが今にも曇りそうだ。

「さっきはついカッとなって合気道の技なんかかけてしまったけど、結果的に君を守れてよかったよ」

聞くと水城さんは合気道の有段者で、今でも時間があれば稽古をしているという。武術を身に着けているというだけで、ただでさえイケメンなのにさらにかっこよさが増す。

水城さんの唇、柔らかかったな……。

不意打ちで額にキスをされた感触を思い返していると、水城さんはそんな私を見てクスッと微笑んだ。