「思ったより早くこっちに着いて、アパートの前のコインパーキングで車を停めて待ってたんだ。そうしたら、妙な男がウロウロしていて普通じゃないなって直感した。もし、君に万が一のことがあったら、と思ってその男のことを陰で見てたんだよ。まさか、本当に君に手を出すつもりだったなんてな」
同じ男として呆れる、と言わんばかりに水城さんは私の頭の上で深いため息をついた。
先日のデートで具合が悪くなった時、送りのタクシーに同乗してくれていたため水城さんは私のアパートの場所をちゃんと覚えてアパートまで来てくれていたのだ。
水城さんがいなかったら今頃……。
そう思うと、身の毛もよだつ。
「そういえばあいつ、君が店にいたとかなんとか言ってたけど……」
「え、あ、多分……誰かと間違われてたんだと思います。店なんて知らないし、今までずっと仕事してましたから」
あ~だめだめだめ! 私と水城さんの接点がイルブールだってバレたら……もうピアノ弾きに行けなくなっちゃう。
演奏している姿を見て優香じゃないって気づかれてしまうかもしれないし、水城さんが叔父に私のことを尋ねたらおしまいだ。けれど、真実を隠せば隠そうとするほど嘘で塗り固めなければならず、それと同時に罪悪感が生まれる。そうわかっていながら、私は咄嗟に誤魔化すようなことを言ってしまった。
「まだ怖い? 平気か?」
違うことで曇り顔をしていた私に、水城さんが心配そうに声をかけてきた。
「もう平気です。だいぶ落ち着きました。水城さんに会えて嬉しかったです」
これは私の本当の気持ち。優香を演じての取り繕った言葉じゃない。けれど、彼の胸に届くのはすべて優香としての言葉だ。それがどうしても歯がゆい。
「あのさ……」
同じ男として呆れる、と言わんばかりに水城さんは私の頭の上で深いため息をついた。
先日のデートで具合が悪くなった時、送りのタクシーに同乗してくれていたため水城さんは私のアパートの場所をちゃんと覚えてアパートまで来てくれていたのだ。
水城さんがいなかったら今頃……。
そう思うと、身の毛もよだつ。
「そういえばあいつ、君が店にいたとかなんとか言ってたけど……」
「え、あ、多分……誰かと間違われてたんだと思います。店なんて知らないし、今までずっと仕事してましたから」
あ~だめだめだめ! 私と水城さんの接点がイルブールだってバレたら……もうピアノ弾きに行けなくなっちゃう。
演奏している姿を見て優香じゃないって気づかれてしまうかもしれないし、水城さんが叔父に私のことを尋ねたらおしまいだ。けれど、真実を隠せば隠そうとするほど嘘で塗り固めなければならず、それと同時に罪悪感が生まれる。そうわかっていながら、私は咄嗟に誤魔化すようなことを言ってしまった。
「まだ怖い? 平気か?」
違うことで曇り顔をしていた私に、水城さんが心配そうに声をかけてきた。
「もう平気です。だいぶ落ち着きました。水城さんに会えて嬉しかったです」
これは私の本当の気持ち。優香を演じての取り繕った言葉じゃない。けれど、彼の胸に届くのはすべて優香としての言葉だ。それがどうしても歯がゆい。
「あのさ……」



