今日も清々しい五月晴れ。

私の会社には小さな中庭があって、ランチタイムをそこでとる社員も多い。

午前中の仕事を終えて、ひとり木陰のベンチに座ってコンビニで買ったおにぎりにかぶりつきながら、“水城さんの恋人の振りをする”ということをぼんやりと考えていた。

なるべく自分を優香に似せるため、好きな食べ物や趣味、化粧の仕方とか口癖を週末のデートまでにマスターしなければならない。

考えてみれば、今まで優香のことこんなに意識したことなかったなぁ……。

見た目がまったく同じと言っても、細かなところではやはり自分とは違う。例えば、優香は野菜が嫌いだけど私は好き、映画の趣味だって恋愛ものが好きな私とは違い、優香は大のホラー好きだ。

水城さんの恋人として優香と入れ替わるといっても、まだ一回しか会った事ないんだし、水城さんだってどこまで優香のこと知ってるかわからない。

そんな身構えなくても大丈夫だよね……?

完全に拭いきれない不安をそう思うことで気楽に考えることにする。

そろそろオフィスに戻らなきゃ。

食べ終わったおにぎりのゴミを袋にまとめ、ベンチから立ち上がろうとした時だった。バッグの中のスマホが鳴る。私の知っている限り、こんな時間に電話をしてくるのは優香くらいだ。

「もしもし?」

誰からの着信か確認もせずに電話に出ると、それは優香からではなく意外な人物からだった。

『もしもし、水城です』

「えっ?」