私はブンブンと首を振ると、ティッシュでチーン!と鼻をかんだ。

「みっともないところ見せちゃったね」

なんとか作り笑いで誤魔化すけれど、叔父はそんな私が不憫だというように眉尻を下げた。

「まったく、俺の可愛い姪っ子泣かすなんて、とんでもねぇ親だな」

何を言われたのか単刀直入に聞かないのは、叔父の優しさだと思う。
気がつけば、もう閉店の時間だ。若いカップルが仲睦まじい姿で会計をしているのが目に入る。

私も、あんなふうに水城さんと恋人として幸せになりたかった……ただそれだけなのに、そう思うことは、間違いなの?

父の辛辣な言葉が蘇ると、再び目頭に熱がこもる。

「本当のこと言うと、最初にお父さんが水城さんを優香に紹介したの」

「え?」

私が話を切り出すと、叔父はスタッフに「早く店を閉めてくれ」と気を遣ってくれた。ブラインドを下げ、店のドアに“closed”の札がかけられる。

「優香には元々恋人がいて、だから優香と私が入れ替わったのが水城さんと付き合うきっかけだったんだ」

それから、優香と川野さんが付き合っていることに反対している父のことや、父から水城さんと別れるように言われてしまったことを叔父に全部話した。その間、叔父は私の話をずっと黙って聞いてくれていた。