「優香がろくでもない男と付き合っていること自体が不幸だ。お前に水城君は相応しくない。お前だって、分不相応だとわかっているんだろう?」

分不相応――。

それは心のどこかで感じていた不安だった。だから、父からそう問われて私は否定することができなかった。

「ああ、もうこんな時間か。お前も頭を冷やしてよく考えるんだ。なにが一番大切なのかを、ではな」

父は俯く私にそう言って席を立つと店を出て行った。

今まで遠くに聞こえていた店のBGMがやっと正常に聴こえてきたとき、私は大きくため息をついて顔を覆った。今まで我慢していた感情が、涙が堰を切ったように溢れだす。

ここ、叔父さんの店なのに……お客さんだっているのに、泣いたらみっともない。

ズッと鼻を鳴らしたそのとき、目の前にボックスティッシュが飛び込んできた。

「ほら、可愛い顔が台無しだぞ」

顔をあげると、やれやれというように叔父が頭を掻きながら向かいに座った。

「叔父さん……」

「親父さんの秘書に『大事な話をしているから、口出ししないように』って釘刺されちまって、なにもしてやれなくてごめんな」

叔父も傍から見て気が気じゃなかったのだろう。