偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~

水城さんとラブラブに過ごした週明け。

日中、真夏の太陽に照り付けられたアスファルトからむせ返るような熱気があがってくるようで、仕事が終わって会社を出ると一気に肌がしっとりと汗ばんでくる。

今夜も熱帯夜になりそう。

私はいつものようにイルブールで演奏をすべく、店へと向かった。

ノースリーブの腕に触れると、湿気を含んだその肌に昨夜の彼との情事がふとよぎる。
いまだかつて、こんなにも異性を求めたことはない。自分の中に隠された貪欲さを改めて知ると、今朝まで一緒にいたというのに、もう水城さんに会いたくてたまらなくなる。

その水城さんは、来月のプレゼンのお題である新メニューを煮詰めるためにしばらく忙しいらしい。会えない日がどのくらい続くのかと思うと自然と肩が落ちる。

水城さんだって頑張ってるんだから、私は私で自分のやるべきことをちゃんとしなきゃね。

「叔父さん、こんばんは」

今夜もイルブールはお客さんで賑わっていた。暑気払いの飲み会が行われているようで、いつも以上にガヤガヤとしている。

「愛美ちゃん、お疲れ! 今夜もよろしく。いやー、しかし暑いな。飲み物は?」
玉のような汗を額に滲ませた叔父が、忙しそうにしながら私を笑顔で出迎えてくれた。