偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~

パリメラは大手企業だ。広告代理店なら「是非ともうちで!」とこぞって参加するだろう。当然、父の会社であるアルコン広告社だって……。

「今回は指名ではなく、競合という形をとってるんだ。けど、あまり大勢の企業の中から選出する時間がなくて、十社限定で行うことになっている。残念ながらすでにその十社はもう決まっていて、もちろん優香さんの会社も参加してもらうことになっているんだけど……」

水城さんの言葉に、三人とも手を止めて彼を注目する。何を言うのかとドキドキしてしまう。

「是非、川野君の会社にも参加してもらいたいと思っているんだ。いきなりで申し訳ない……どうかな?」

「えっ!?」

川野さんと優香が声を大にして驚いた。

こういうビジネスの話はよくわからないけれど、おそらくパリメラに集う広告代理店はアルコン広告社と同様、大手企業ばかりだろう、川野さんの会社はまだまだ成長途中の中小企業、そんな強豪企業が肩を並べる中に入ってプレゼンだなんて……と、私はちらりと川野さんを見た。彼は水城さんのまさかの申し出に、目を点にして放心していた。

けど、考え方を変えれば、これは川野さんの会社にとって大きなチャンスだよね?

「真鯛と季節野菜のグリル、バルサミコ風味でございます」

そのとき、メイン料理は運ばれてきてハッとする。緊張と戸惑いで強張っている川野さんと違い、優香は目を輝かせてメインのプレートを見ている。

「あの、水城さん……」

しばらくすると、川野さんが少し俯き加減で口を開いた。