偽恋人からはじまる本気恋愛！～甘美な罠に溺れて～

「そうだよって何度も言ってるのに、健太さんってば冗談言ってるって信じてくれなくて……」

いきなりパリメラの社長直々にご招待されたなんて言われたら、私だって同じこと思うよ……。

こういう場に慣れている優香とは違い、川野さんはいまだにそわそわしている。

「川野君、まずはお礼を言わせてくれないか、シオンのこと本当にありがとう」

「そ、そんな、たまたま兄が動物病院をやってただけで、僕はなにも……」

水城さんが言うと、川野さんが大げさに首を振って謙遜する。

「もっと早くお礼を言うべきだったんだが……だから、今夜は存分に楽しんで行って欲しい。まずは乾杯だな」

すると、タイミングよく店のスタッフが来て赤ワインをそれぞれのグラスに注いでいった。

「じゃあ、水城さんと愛美に乾杯だね」

「え？」

私がきょとんとしていると、優香は「乾杯」とグラスをあげた。

「そういうことにしておこうか」

水城さんに言われて私も明るく頷いた。

グラスがカチンと合わさるいい音が部屋に響いてひとくち飲むと、旨味を含んだ味わいが口に広がった――。