偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~

「ごめん、続きは……食事の後だな」

水城さんのマンションでふたりきりだと思うと、どうしようもなくドキドキして胸の高鳴りが収まらなかった。


「ふぅん、料理が苦手って言うわりにはなかなか器用だな」

「そうですか? そんな風に言われたの初めてです。優香にはセンスないっていつも怒られてますけど」

私は笑ってタブレットでアクアパッツァのレシピを開き、手順を確認しながら野菜を切る。

「うん、切り口も均等だし、こういうのは性格が出る。君は几帳面だ」

そう言う水城さんも、さすが料理に精通しているだけあって手際がいい。

キッチンを見てみると、豊富な種類のスパイスやハーブが瓶詰めにされていて、包丁も使い分けのためか様々なタイプのものがスタンドに刺さっている。

「アクアパッツァって、ブイヨンみたいなのは使わないんですね」

「ああ、水とトマトあるいは白ワインを加えてシンプルに味付けするんだ」

「それに、ずっと不思議だったんですけどお魚はどうして切り身を使わないんですか?」

「それは骨からうまい出汁が出るから、あえて尾頭のついた魚を使うんだよ」

まるでマンツーマンで料理教室に通ってるみたい……料理って楽しいな。

煮込んだ魚から食欲をそそるいい匂いが立ってくる。

「アクアパッツァだけじゃなくて、マルゲリータやバーニャカウダも作ろうと思って用意してある。ここは俺に任せて――」

「一緒にやりましょう、教えてください」

すると水城さんはやんわりと笑って、私の腰を引き寄せた。

「じゃあ、そうしようか、せっかくだしな。ほら」

バーニャカウダ用に細長に切ったパプリカを摘まみ、水城さんが私の口に挿し込んだ。