「だって、なにもかも最初から全部仕組まれてたことじゃない。水城さんだって、最初から愛美だってわかってたわけだし……言い方悪いけど私は利用したんだよ、愛美のことが気になってるっていう水城さんの気持ちをさ」

優香が眉尻をさげて力なく笑う。けれど、水城さんが明かしてくれた真実を知ったことで、私は怒る気にもなれなかった。

「そりゃ、水城さんから本当のことを聞かされたときは驚いたけど……」

「でも、結果オーライって感じだね、よかった! よかった! ハァ、問題はお父さんだよねぇ……」

お父さんのことや健太さんのこと、不安でしょうがないはずなのに、それでも水城さんとのことを喜んで優香はにこりと笑う。そんな彼女に胸がじんとなる。

「お父さんにはもちろんこのことは言わない。水城さんもまだそのときじゃないって言ってたし、私もそう思う。優香は自分の気持ちに正直になって、ちゃんと健太さんと幸せになるんだよ?」

「……うん」

そう言うと、優香はそっと人差し指で滲んだ目尻を拭った――。