「確かにね……。でも、お父さんのことは心配しないで、とにかくバレなきゃいいんだから」

不安げな私に優香はうんうんと頷いて見せる。

「本当に大丈夫かな……水城さんとのこと、優香になんて言ったらいいかわからなくて、迷ってたら『妹さんに黙ってるなんてできないだろう?』って言われて……あのね、水城さんってすごく優しくて気が利いて――」

「あー、はいはい。惚気はいいから」

私の言葉を切ってパンパンと手を叩く。

「の、惚気てなんか……」

「お父さん、愛美のこと気がつかなかったでしょ?」

ふと、言われて言葉に詰まる。私のその反応でどうやら優香は理解したようだった。

「愛美に嫌な思いさせちゃったね。まぁ、お父さんに気づかれたらそれもまずいんだけど……」

「私は大丈夫だよ。お父さん、あんまり変わってなかった。会わない間にずいぶん年取ったねって、当たり前か……もう十年経つんだもんね」

謝恩会で会ったときの父の姿を思い出して苦笑いする。

「愛美にあんな素敵な彼氏ができてちょっと安心した。だって、前に付き合ってた人から振られたときの愛美ってば、もうこの世の終わりみたいな顔してたもん、愛美の悲しい顔、もう見たくなかったし……愛美、話してくれてありがとう。それに、怒られるとしたら、私のほうでしょ?」

「え……?」