偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~

ドキドキしながらはぐらかすように言うと、水城さんが私の項の傍でクスッと笑う気配がした。

恋愛経験が乏しいせいで抱きしめられるということ自体、私には刺激が強すぎる。しかも、ずっとずっと陰から見ていた人にだ。これでは心臓がいくつあっても足りない。

「君が俺のことを店でずっと見ていたって話しだ。それは本当か? 正直言うと、俺もこういう色恋には不器用なんだ……だから、もし、本当なら勘違いするぞ?」

もう、これ以上嘘なんてつけない。そう観念した私はこくんと小さく頷いた。

「本当です。素敵な人だなって……見てました」

今にも消え入りそうな声で答えると、私を抱きすくめる腕に力がこもった。

「すまない、ちょっと……自分でもどうしていいかわからない」

こんなこと言うつもりじゃなかったのに、自分でもどうしていいかわからなくなるほど、水城さんを困らせてしまった。

迂闊に水城さんのことを見ていたなんて、やっぱり言うべきじゃなかった。

そうだよね、いきなり私にそんなふうに言われたって……。

店で私を気にかけてくれていたかもしれないけれど、実際会ったらイメージが違った。なんてこともあり得る。今なら、お互いの気持ちをなかったことに……。

「あっ……」