偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~

あ~、もう何言ってるんだろ私……恥ずかしい!

鏡を見なくたって、頬が真っ赤になっているのがわかる。水城さんは数回瞬きをした後で私に言った。

「君も、俺を見ていたって……それ本当か?」

水城さんは腰を浮かせ、前のめりになって私との距離を詰める。

「あ、あの……」

自分の恥ずかしい発言を撤回しようと、ぐるぐる言葉を考えていたその時、コンコンと部屋のドアがノックされてハッとなる。

「あ、私が出ます。もしかしたら服が仕上がったのかも」

「ちょっと待て」

身に着けているものはガウン一枚。そんなことも忘れて、私は水城さんから逃げるように椅子から立ち上がった。

「失礼します。クリーニングサービスです。こちらのお召し物が仕上がりましたのでお持ちしました」

ドアを開けると、若い女性スタッフがにこにこ顔で立っていて、依頼していた服を手渡された。

「ありがとうございます。助かりました」

「ほかに何か必要なものはございますか?」

「いえ、大丈夫です」

軽く首を振ると、スタッフの女性は「それでは失礼いたします」と言って早々にその場を後にした。