「なるほど、君なりに優香になりきるため必死だったというわけか、俺もだよ。俺も、目の前に愛美である君がいるというのに、優香として接しなければならない歯がゆさで、うっかりボロが出ないか内心ヒヤヒヤしてた」

自然と顔を見合わせると同時に、お互いに堪えきれない笑いを噴きだした。

ふたりの笑い声が部屋に響き、雰囲気が和やかなものに変わる。

「頭でっかちに考えすぎて、なんだか遠回りしてしまった気がする。初めから男らしく正攻法で君に声をかけるべきだったな」

真摯に見つめてくるその視線に、気恥ずかしさを感じて思わず目を逸らしたくなる。

水城さんが真面目に私と向き合おうとしてくれているのに、目を逸らしたら変に誤解されるかもしれない。だから私もじっと見つめ返した。

「君が色恋沙汰に興味がないって、決定的なことをイルブールのオーナーと女性スタッフが話しているのを偶然聞いてしまって……それにストーカーから狙われていることも」

「そんなこと話してたんですか? 実はイルブールのオーナー、私の叔父なんです」

「え? そうだったのか、なるほどね。どうりで君にだけよく話しかける男だと思った。叔父さんか、俺の勝手な勘違いでよかった」

水城さんは、ほんのり恥ずかしそうにカリカリと頬を人差し指で掻いた。