一夜からはじまる恋

「言えないことは言わなくていい。つらいなら言葉にしなくてもいい。今から君に質問がある。」
湊は樹のお腹に手を当てたまま話始めた。

「結婚はしてないよな?」
会社の社員情報をみればわかることも樹の口から聞きたくて、湊は見ないようにしていた。一方的に情報を知るのはルール違反な気もしている。樹に聞くからには自分自身のこともちゃんと知ってほしいと思っていた。

樹はタオルで目元を覆ったまま首を縦に振る。

「俺もしてません。」
湊は自分の言葉に樹が反応してくれるだけでほっとした。