「本当に俺の場所からは見えなかった」
そんな言葉に樹が湊の方を見る。
「俺は会社の駒でしかないのかもしれないって思うこの数か月だったんだ。そんな時に納涼会があって。双葉さんの言葉に本当に救われた。」
湊はまっすぐ前を見て話しをする。
今の湊は社長という肩書を下ろしてありのままの自分を見せてくれているように思った。
「ステージの上からじゃ社員は見えない。社長室にいるだけじゃ会社の隅々までは見えないと思って、最近いろんな部署に顔を出すようになっていっぱい気づきがあった。」
湊は樹の方を見る。

「本当に感謝してる。ありがとう。俺に大切なこと教えてくれて。」
湊のまっすぐな視線に樹は惹きつけられた。

「それで、企画部に行ったら双葉さんが休んでるって知って。気になって。来てしまいました。」
湊は急にバツが悪そうにめをそらした。