泣きはらした目でタクシーに乗り帰宅するとアパートの入り口で声をかけられた。

振り返ると黒い乗用車が停まっている。
運転席を見るとそこにいたのは湊だった。

湊は車を降りて樹に近づいてくる。
近くまで来て樹が泣きはらした顔をしていることに気づき心配そうにその顔を覗き込んだ。
「どうした?」
湊の心配そうな表情に樹は湊の胸に飛び込んでいた。

誰でもよかったわけじゃない。

今声をかけたのが湊だったから。

そのぬくもりを求めていた。