理恵の瞳からも次々に涙があふれた。
しばらくしてあたりが暗くなるころ公園の前に黒い一台の車が停まった。
樹にはすぐにその車が湊だとわかる。
「理恵!」
車の中からは湊よりも先に助手席から男性が降りてきた。その声の方を見て理恵の顔が涙でゆがんだ。
その男性は迷いなくベンチに座る理恵を抱きしめた。
「ばか」
その一言に理恵さんは声を上げて泣き始めた。それまで張り詰めていたものが崩れるように泣き出す理恵に樹はそっとベンチから離れた。

「もう一人、おばかがいるな。」
車から降りた湊は樹に自分の上着を着せる。
「樹には負けるよ、本当に。」とつぶやきながら樹を抱きしめた。
「まったく無理して」
と言いながらも湊は笑顔だ。