一夜からはじまる恋

「樹ちゃん。」
「はい?」
「ちょっといいかしら」
樹はめずらしく陸の母に病室の外に呼ばれて胸騒ぎがした。

陸の母は屋上に樹を誘った。
ベンチに並んで座りしばらく風を感じた後、陸の母は樹をまっすぐに見た。
その瞳から涙が流れている。
樹は陸の母が言おうとしていることが分かり泣き出す。

そして陸の母に向かい首を横に振る。
涙で言葉にならない。
陸の母は樹の両手を自分の両手で包み込んだ。