「理恵の気持ちも想いも一番わかってるからこそ知らないふりをしてるんだよ。その事実を知ってそれでも一緒にいようって言っても理恵が納得できないだろ?あいつは一生旦那に後ろめたさを感じて子供を見るたびに心痛める。そんな奴だよ。」
樹は理恵たち夫婦が抱えている大きな苦しみや悲しみを知って心が痛んだ。
「二人には時間が必要なんだよ。理恵には社会に復帰して自分自身を責め続けている気持ちを別の情熱にかえる必要がある。旦那の方にはそんな理恵のすべてを一緒に背負う力をつける時間が必要なんだよ。」
湊の冷静な言葉に樹は黙り込んだ。
湊はそんな樹を寝室のベッドに寝かせて自分も横になる。
いつものように湊は樹のお腹に耳をあてた。
「こうして命を授かるって本当に奇跡なんだよ。廉のところも理恵のところもさ、いろいろな夫婦の形やたどる道が違う。子供を授かることだけが幸せじゃないけどさ、俺たちはこうして命を授かれた。」
「うん」
「大切にしないとな。」
「うん」
「おっすっごい動いてる」
「本当だ」
二人で赤ちゃんに触れながら話をする夜。樹は命を授かる奇跡に感謝をしながら目を閉じた。