一夜からはじまる恋

医大の話をしているときの湊とは表情が変わったことに樹は気づいていた。
「でも会社に入ったら俺なんて本当にマネキン状態でさ。言われたことを従順にやる毎日にすぐに精神的にやられたよ。石川さんが俺についてあれこれ教えて守ってくれたんだけどさ、長年勤めている重役は下積みもなく社長として俺が会社に入ったことが気に入らない人ばっかりでさ。いやがらせされたり。」
「・・・」
湊の話に樹の心も痛む。
「医者として助けられる未来の命よりも、今俺を必要としている1000人の生活って思ってたのは俺の勝手な思い込みでさ、俺じゃなくても誰でもよかったんじゃないかって思ってたんだ。」
「そんなことない」
樹の言葉に湊が微笑む。
「前にもそう言ってくれただろ?」
「?」
「納涼会の日」