一夜からはじまる恋

「格好悪いだろ?昔の俺にあったら自分でも何やってんだって言ってやりたいよ。」
湊の過去に初めて触れられたような気がして樹はうれしささえ感じていた。
「反抗期っていうのもあったんだろうな、ずっと医者になりたいって思っててさ。医大に自分でバイトしたお金で入って、大学では家のこと黙ってたんだ。」
「自分で医大のお金を?」
「あぁ。俺なりの両親への反抗と、自分がやろうとしていることへの覚悟っていうか、けじめだったんだ。」
樹は自分が思っていた以上の苦労を湊が経験してきたことに心が揺れた。
「医大ではさ、俺と同じような境遇の人が多くてさ。その一人が廉だった。個人病院の跡取りで決められた運命があって、ずっと経験してきたことが俺とかなりリンクしたんだ。うれしかったなー。やっと求めていた存在に出会ったように思ったんだ。」
湊が思い出しながら嬉しそうに微笑む。
「理恵もその一人。理恵のお父さんは歯科医大の教授でお母さんは精神科の教授なんだ。」
「そう」
「数少ない俺の仲間なんだ。」