陸の母は花屋の店員とにこやかに話をしながら花を選んでいる。

「俺は速見さんと会ったことはないけどさ、ご両親にお会いしてすごいすてきな、あったかい方たちでさ。俺なんて一発殴られるくらいの覚悟だったのに。優しくてさ。きっと速見さんも同じだったんだろうなって思った。」
湊は樹を見る。

樹の瞳からは次々に涙が流れていた。

「樹の中にずっと速見さんがいて当然だって思ってる。速見さんがいなかったら今の樹はいなかった。そしたら俺たちだってどうなってたかわからないだろ?俺は速見さんに感謝さえしてるんだ。」
樹はゆっくりと湊を見た。