「命は何とかとりとめてくれました。でも意識がないまま5年間眠り続けていたんです。」
「・・・」
「私は奇跡を信じていました。彼が目覚める奇跡を。」
樹の瞳からとうとう涙があふれだす。
「でも結局目覚めることなく彼は亡くなりました。」
「いつ?」
湊の言葉に樹は陸の写真を見たまま答える。
「湊さんとの夜を過ごした一か月ほどあとです。」
「・・・」

「私は最低なんです。彼が奇跡を起こしてくれるって信じながら、信じきれなくて・・・彼を裏切ってしまった。」
樹は瞳を閉じた。陸の笑顔がまぶしすぎて見ていられなかった。