一夜からはじまる恋

「樹!樹!」
陸の声とは違う。

この声は湊だとわかった時、樹は目を覚ました。
「落ち着け。大丈夫。大丈夫。」
意識がないまま樹は涙を流し苦しそうに顔をゆがめていた。
樹の手を伸ばした手を湊が握る。

湊のぬくもりの中で樹は意識を取り戻した。

現実の世界に戻った樹は夢の世界の喪失感に心がまだついていかない。

「痛みは?大丈夫か?」
心配そうな顔の湊に樹はすぐに答えることができなかった。