一夜からはじまる恋

「ただいま」
当たり前のように帰宅する湊。その日も湊は両手に買い物袋を下げていた。
大企業の社長が近所のスーパーで買い物をしている姿を想像すると樹の心がまた温かくなる。
「あっ」
帰宅してすぐにキッチンに樹の作った夕飯を見つけて湊は樹を鋭い目で見る。
「何もするなって言ってるのに。あっ!洗濯もしただろ!?」
「さすがに洗濯は・・・」
「何かあったらどうすんだよ。」
「休みながらだから・・・」
樹の言い訳にも湊は鋭い目で見ている。
そのまま自分のスーツのポケットから携帯を出すと誰かに電話をかけはじめた。
「もしもし俺です。明日の予定全部キャンセルしてください。用事が出来たので」
湊の話の意味が分かり樹は慌てて湊の電話を取り上げる。
樹が安静にしないなら仕事を休むという意味だ。