「ありがとうございます。気遣っていただいて。」
樹の言葉に湊が突然真剣な表情になる。

「それは違うよ。」
「え?」
「樹のお腹にいるのは俺と樹の子だろ?俺はつわりのつらさも体のマイナートラブルも実際には体感できない。常にその子を守って育ててくれてるのは今は樹に任せきりなんだ。だから樹を気遣うのは当然だし、まだまだ足りない。」
「・・・」
「それに恥ずかしいんだけどさ、元医者でもそのつらさの半分も、どうしてあげたらいいのかもわからないんだ。」
「十分ですよ?」
「全然。最近ネットで検索した知識とか雑誌の情報を引用してるだけなんだ。気の利いた事思いつかなくて。ごめん。なんかずるいよな。カンニングしてるみたいでさ。」
樹は湊の言葉が素直にうれしかった。