「……おはよう、メロ」
半分眠ったまま、黒猫に挨拶をする。
手探りで彼を見つけ、やさしく撫でた。
「…ん?」
何かがおかしい。
もしかして……
「きゃっ!!」
黒猫は綺麗な男の人へと変わっていた。
メロは満月の日のみ、人へと変身する。
不規則に変わるからたまにこうなるのだけど……
最近わかったことがある。
メロはどのタイミングで変身するか、自分でコントロールできるのだ。
そう、今もわざと。
「メロ!」
「なかなかの顔だぞ。薔子」
「何よ!」
彼は、私を困らせることが好きらしい。
なんて性悪なのかしら。
「そういえば、今日はまた許婚が来るんだよな?」
「うん…」
いつもふらりと遊びに来る 私の許婚。
「今日はお食事会なの」
「へぇ〜」
「興味なさそうね」
「俺は出席できないからな。楽しみじゃないのか?」
「楽しみなわけないでしょう? だって、私は彼と結婚なんてしたくないもの」
「許婚はお前のことが相当好きみたいだけど」
「それは私も知っているわ。でもなんだか嘘みたいなのよね。家のためにしょうがなく好きなんて言っているけど本当は…」
「お前の考えすぎだ」
「そうかしら…?」
「ああ」
今日のメロはいつもと違う。
はっきりとはわからないけど、なんとなくそう思う。