樹枝海を出てから、おそらく二時間は経った。
 休憩を挟まず歩きっぱなしで、私は恨めしい気持ちで風間さんを窺い見る。
 
 風間さんには疲労のひの字もないようだった。
 休憩はまだ無理そうだ。

「はあ……」

 私は密かにため息をつく。
 正直なところ、風間さんについて行くのも精一杯だ。
 風間さんは意外なことに足が速かった。
 
 でも、もしかしたらこれでも合わせてくれてるのかも知れないとか考えちゃうと、ペースを落としてもらえますか、とは言い辛い。

 また密かにため息をつこうとしたときだった。
 風間さんが不意に振り返った。

「足、大丈夫ですか? 速くはありませんか?」
「あ、大丈夫です」

(大丈夫じゃねええ! なんで大丈夫じゃないって言わないの!? 今、ここ、チャンスだったとこっ! なんで良いとこ見せようとか思っちゃったかな、私のバカ!)

 でも、そんなこと思う時点で、まだ未練たらたらなのか……? 自分のバカさ加減に辟易する。

「……はあ」

 結局また、私は密かにため息をついた。