私の中におっさん(魔王)がいる。~黒田の章~


 * * *

 日が沈み、空が余映を映す頃、両軍の陣地からドラゴンの角笛が鳴り響いた。
 撤退の合図であった。

 美章軍・死者百五十名。
 功歩軍・死者百六十五名。

(拮抗している)

 ろくが初戦で見た限りでは、実力差も、軍事の差も、人数も、そこまで大差があるわけではない。
 拮抗を崩すには、突破力か奇策がいると、ついろくは思考を巡らせたが、すぐにかぶりを振った。

 東條がいるのだ。
 彼がいて、負けるわけはない。

 少なくとも、すぐにどうこうなることはないだろう、ろくはそう考えていた。
 しかし事態は翌朝、急変する。