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日が沈み、空が余映を映す頃、両軍の陣地からドラゴンの角笛が鳴り響いた。
撤退の合図であった。
美章軍・死者百五十名。
功歩軍・死者百六十五名。
(拮抗している)
ろくが初戦で見た限りでは、実力差も、軍事の差も、人数も、そこまで大差があるわけではない。
拮抗を崩すには、突破力か奇策がいると、ついろくは思考を巡らせたが、すぐにかぶりを振った。
東條がいるのだ。
彼がいて、負けるわけはない。
少なくとも、すぐにどうこうなることはないだろう、ろくはそう考えていた。
しかし事態は翌朝、急変する。



