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 巻物を見た隊長は、怪訝な様子だった。
 最初は驚いて、次に怪訝な顔になって、今は何やら考え込んでいる。

「これ、いつものように処分しておいて」

 隊長は上の空で、俺に密書である巻物を渡した。

「分かりました」

 俺は了承して、巻物を外に持っていく。
 家の小さな庭で、カンテラをかざして、巻物を開いた。
 俺が見るという事は、隊長も知っているから問題はない。

(ま、渋々了承ってとこだけど)

 巻物の中身は、驚く事だった。

 ――― ――― ――― 

 黒曜竜へ。
 例の物はやはり偽者。
 本物と思しき物を入手。
 六代戯王はただのエネルギーの塊ではない。
 人間の魂の集合体也。
 その数、約五千と思われる。

            花小竜
 ――― ――― ――― 

 六代戯王とは、魔皇帝と恐れられた人物で、密書内で魔王の名を使うさいは、代理で六代戯王と書くことになっていたので確実に六代戯王は、魔王のことだ。

 花小竜の花押があるが、文章を書いたのはおそらく月鵬だろう。
 文体が前の密書と同じだ。

 それにしても……魔王が人間の魂の集合体だとは……。大よそ信じられない話だ。
 でも、なんのエネルギーなのか? と、問われれば、はっきりとした答えが導き出せないのも事実なんだよな。

 ふむ……これは楽観主義の俺でも考え込んでしまうなぁ……。
 とりあえず俺は、カンテラの火を巻物に移した。