「キミが言えないなら、ぼくが言おうか? キミはぼくに許されたかった。自分が許して欲しいから、人の過去をほじくるような事したんだろ?」

 図星だ。たしかに許して欲しい気持ちがあった。
 でも、それだけじゃない。
 だけど、私は二の句が告げない。
 そんな私に、クロちゃんは、

「許して欲しいなら、そっとして、見ない振りしてれば良かったんだ」

 ぽつりとこぼして、顔を歪めた。
 そのまま階段を駆け上がって、自室のドアを思い切り閉めた。
 私は、呆然としてしまった。
 あんなに泣き出しそうなクロちゃんを見たのは初めてだった。

(ああ、そうか……)

 途端に気がついた。
 彼は傷つくと、怒りに紛らわすタイプだったんだ。
 多分、本当はすごく繊細なんだ。
 自信に満ち溢れてるわけじゃない。
 そういう風に言うことで、自分を鼓舞してただけで、本当は、すごく傷だらけだ。
 そして多分、私が一番傷つけた。
 して欲しくないとサインを出していたことに、気づいていながら詮索をして、知られたくないと思っていたことを、わざわざ知ったと本人に告げた。

『気づいてたらなんでするの?』

 その言葉の後に、続くものがあるのなら――そういうのが、一番傷つくんだよ。という言葉だったのかも知れない。
 たしかに、私は身勝手な行動をした。
 知るだけならまだしも、許して欲しくて話題に出した。

(だけど、違う。それだけじゃない)

 私はこぶしを握り締めた。
 大きく息を吐き出して、階段を駆け上がる。
 クロちゃんの部屋のドアを勢いよく開けた。
 そのままズンズンと部屋の中を突き進む。

「……え?」
 ベッドに横になっているクロちゃんが、驚いた顔をして固まった。
「な、なに。なんなの!?」
 戸惑いながら起き上がろうとする彼の肩を掴んだ。