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私とお姉さん――七々(ナナ)さんは、図書館で別れた。
私は七々さんの話を思い返していた。
その式典を最後にクロちゃんが式典に出ることはなくなって、代理が式典に出ることが彼にだけ許されるようになった。
実力で見たら、いつ将軍になっていてもおかしくないのに、白星であるせいで、三関より先に行けないんじゃないかと言われているらしい。
美章の王様、志木彩鈴(しきさいりん)は、クロちゃんを目にかけてくれてはいるものの、女王であるためか権限はあまりないみたいで、また彼を擁護する姿勢に反感を持つ者もいるらしい。
国を守るために小さい頃から戦ってきたのに、どうして石を投げられたり、非難されたりしなくちゃいけないんだろう?
私は憤りで胸が張り裂けそうだったけど、彼を守ろうとしてくれている人達がいることが救いだった。
翼さんに、女王に、七々さん。
七々さんは、あの式典でクロちゃんを見たんだそうだ。
遠目で顔も形も分からなかったけど、キラキラと輝いた金の髪だけが、青空に映えたように見えて、凄くキレイだと思ったんだそうだ。
それからクロちゃんのファンになって、彼の戦績を調べたり、彼のことを調べたりしたらしい。
だから、クロちゃんの内情(女王の擁護とか)を知っていたみたい。
彼女はあの出来事が起こったことを、ひどく哀しんで、後悔していた。
酷い噂が流れたこともあったんだとか。
内容に関しては口を閉ざしてしまったので、聞けなかったんだけど……。それにしても、知らなかったとは言え、私がしたことは、クロちゃんが触れて欲しくない部分に土足で踏み込んだようなものだったんだ。
私は鬱々とした気持ちのまま、シュシュルフランのドアを開いた。